春の夜。

春の夜は苦手だ。

桜の枝が吹かれて、ざぁざぁと揺れる様を見ていると、心が泡立った。

夜、外出しなくなった今も、眼を閉じるとそういう光景が浮かんでは消え浮かんでは消え、なんだか落ち着かなくてそわそわしてしまう。

桜吹雪、というが、わたしには無数の小さな蝶の群れに見える。

小さな羽ばたき。

家族が全員寝静まった今、こうして久し振りに文章なんて書いているのも、春のせいだ。

新しい街に越してから、少しずつぐるりぐるりと家の周りを回っていろんなところを覗いて、家に帰ってから中を整えて、を繰り返している。

日々の生活が実験のようで、試しては少し直し、の繰り返し。

児童館の壁にもたれながら、娘に本を読んでいたら

「ぬるま湯だな」

とふと頭に浮かぶ。

起きて、ご飯を食べて、掃除をして、児童館か図書館か公園に行き、散歩して、お弁当を食べて、また遊んで、家に帰って、ご飯を作って、洗濯物を取り込んで、食べて、お風呂に入って、片付けて、洗濯して、寝る。

もちろん風邪を引けば野戦病院のようだし

1日に何度も大泣きする子供達にため息をつく。

毎日ものすごい勢いで時が流れていって

きっと気がついたらわたしはすっかりおばあちゃんなんじゃないかとおもうけれど

それは赤子の寝息のように、確かで、あたたかで、やわらかくて、

鼻の奥がつーんとしてしまうくらい安穏で平和な日常。

テレビも無いのでニュースも見ず、工事現場のおじさんに今日の天気を聞く始末。

国の行く末より、庭に植えた花が根付くかどうかを心配している。

ぬるま湯生活。

それでもきっと、この生活がいつか、やっぱり思い出したら鼻の奥がつーんとするくらい愛おしくて

ぜったいに戻れない。

そんな1日なんだと思う春の夜。

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