かなり前になりますが、
柚木沙弥郎の模様と染色 という展示に行ってきました。
もともと柚木沙弥郎さんの染めが好きで、猫クッションや団扇を愛用していました。
ただ、これが民藝か?と言われたら私にはわからなくて。ずっと頭の隅に置いてあったものを、しっかりと見つめ直してみたかったのです。
それはデザイン、アート、民藝という垣根について考えること。
そんなことを思いながら、駒場にある日本民藝館に足を踏み入れました。
そこで布達を見た瞬間、わかりました。
そんなこと、そんな小さなことを気にしていたのかい?
語りかけて来るように、布たちは楽しげに笑っていたのです。
それはもうほんとうに、楽しげに。くすくす喋っている声が聞こえてきそうなほど。
笑って跳ねて、時折すごい迫力を醸し出して、生きる歓びを伝えていました。
1回目に訪れたとき、たまたま来館者が少なくて、ほぼ貸し切り。
大展示室であの布たちと一人で対峙したら、なんというか。なんというか。
私まで楽しくて、ニヤニヤしてしまうほど。
布が場の空気をつくる。不思議な体験。
一番の見所は、世界のプリミティブなものたちと柚木さんの布が一緒に展示されていたところでした。
どれも、地面から立ち上る生命力をそのままぶつけたようで、
生きろ、生きろ と叫んでいるようで。
今思い返しても、心が震わされる。
本来の民藝って何だろう。
そんなことを考える。
岩立さんコレクションは圧巻の素晴らしさ。若かりし頃の柚木さんの激しさや勢い、試行錯誤が見て取れて。
でも、90歳を超えて染められた布の伸びやかさもまた違う味わいがあり。
こんな歳の取り方をできたらかっこいいな。なんて。
ずっと書こうと思っていて、書けなかったこと。
となりに生命力のかたまりのような坊やがいるからか。
私の心境の変化か。
デザインというと、付け加えていくこと を意識しがちですが、実際は 削ぎ落としていくことだそう。ぎりぎりまで削って削って。残った本質。
ラジオ深夜便も、日曜美術館もすごく良くて。
本当は講演会も行きたかった。
ちょっと落ち着いたらまたゆっくり観たり聴いたりしたい。
自分の中ではまだまだ咀嚼途中で、でも、長年民藝に携わり、そこから自由に出たり入ったりする柚木さんの言葉は、重い。
西館の床の間に飾られた、インドの民話をモチーフにした手の染めは、ぞっとするほどの力があった。目が離せない。動けない。
まだまだ、楽しいものはたくさんあるんだ。
まだまだ、見たい世界があるんだ。
まだまだ、お前なんてまだまだ。だろう?
そう言ってもらえたようで、思わず笑ってしまう。
これだから民藝はやめられないのだ。
私にとって感覚にバリバリと訴えかけてくるもの。理由なんてなくて、好きで惹かれてどうしようもない。
目を閉じると、太鼓のリズムが聴こえてくるよう。
艶やかで、どこか原始的な柚木さんの布。