美しいヒト。

先日伺った、COSMIC WONDERさんの「にほんくらし籠」

 

本当に素晴らしかった、ということは昨日書きました。
私がその展示に行った目的は、他でもなく、中川原信一さんにお会いしたかったから。
【秋田蕗だより】さんで中川原さんの作る手提げかごを手に入れてから、
雨の日も風の日もこのかごを使ってきました。もちろんリュックを持っていた日もあるけれど。
ほぼ8割の登場でした。
使ううちに(といってもまだ2ヶ月ほど)見えてきたのが
かごの持つ素材自体の美しさと、本来の道具としての美しさでした。
私の個人的な好みですが、籠の中でも、その素材のみで作られているものが好きです。
取っ手をつけるのも、枠も、すべて植物素材であって欲しい。
なぜなら、そのまま土に還せるから。
なが~い目で見たら、プラスチックだって土に還るし、ガラスだって最先端のマテリアルでさえ全て自然由来であることは間違いないのだけれど(元々は地球にあった物質という意味で)
それでも、森の中で暮らしていて、朽ちた木だとか、いつの間にか姿を消す落ち葉に安堵に似た感情を抱きます。
空前の籠ブームで、たくさんの作家さんや職人さんが籠を作っているけれど、ホチキスや針金をそっと使っているかごも多く見受けられます。
逆さにして、フチ編みのところをよ~く見ると見えたりします。
それは確かに確実で、手早くて賢い方法なのだと思います。
職人さんや作家さんだけでなく、安価で早く手に入るものを求める私たち使い手のニーズがあるからそうなるのかもしれません。
けれども、手間を惜しまずに作られたかごは、やはりどこか違う。そう思わせる美しさがあるのです。
美しく、頑丈。そして使いやすい。
そんなかごを手にして気になったのが、
「いったいどんなヒトがこの籠を作っているのだろう?」ということでした。
ご縁をつないでいただいて、
先日、中川原さんにお会いすることができました。
初対面でしたが、遠くからよく来てくれましたね、ありがとうございます。と温かく言っていただけて、
その一言にジ~ンとしました。
お会いし、かご作りを見させていただき、お話させてもらって
3時間ほど横に座ったり、他のかごを見せてもらいながら、
中川原さんに色々質問させていただきました。
一畳ないスペースで、座布団に座って
職人らしく黙々と編んでいく…
と言いたいところですが、すみません。
たくさん質問攻めにしたり、他愛もない話をして、和やか~な中編んでいらっしゃいました。
ただ、要所要所の眼は真剣。そんな時は、静かに黙って見させていただきました。
手に取られたあけびの長い蔓が、するすると束から選ばれ、
それが中川原さんの手の中で、平面から立体になって…
いえ、文字通り手の中でかごになっていく。
まるで魔法のようでした。
底面は長方形、そこから立ち上げていくのですが、綺麗な球体になるように…というより
もう感覚で覚えていらっしゃるそうです。
太さも微調整しつつ、どんどん編んでいく。
小出し編みと呼ばれる編み方は、見れば見るほど単純なように見えて複雑なような。
蔓が生き物のようにしゅるしゅると動くさまは、口を開けて見てしまうほどでした。
見事な手さばきに、じ~っと見入ったり、
時折、中川原さんの操るあけびの蔓の床に擦れる音が
サラサラと静かに響いて、会場の少し神秘的な雰囲気やBGMとも相まって、とても心地よい時間でした。
中川原さんのお話を聞いていて心に残ったこと
少しだけご紹介。
中川原さんは、ものすごく丁寧な方です。
仕事の様子を見ていても、まずモノが散らからない。
一つ一つの作業が、驚くほど丁寧で美しい。
継ぎ足しのときに出た細く短い蔓もすべて使う。

山からもらった大切な蔓だから、最後まで無駄にしないんだ。

 

もう今は、うまく作ろうと思わない。ただ目の前のかごを一つ一つ編むだけです。

 

やる気と根気があれば誰にだってできるよ。
そう柔らかく笑う中川原さん。名人と呼ばれるのに、とても丁寧で優しい。
実演ですから、違うお客さんが来るたびに、聞かれた質問に丁寧に答える。山の話、あけびづるの話も、興味深く、おもしろかったのですが、またの機会に。11時から(たぶん本当はもっと早くから)そして14時までノンストップ。
お水も飲まず、ただただかごを編む姿。
そして、休憩が終わると19時まで編んでいたというから驚きです。
せっかく呼んでくださって、見に来てくださる人がいて、
自分にできることは、ただただかごを編むことだけですから。
と秋田弁でやわらかく語る中川原さんに、衝撃を受けました。
中川原さんのかごが、なぜこんなに美しく働き者なのかという理由がわかりました。
作り手が、真摯で丁寧で、心を籠めて籠を編んでいるから。
結局次の日もお邪魔したのですが、
カゴがたくさん生まれていました。(いつもより多く作業したとのこと。日にもよるけれど1日1個くらい)
蔓とりをしたら、奥様が葉や脇芽を落とし、出来上がった時に蔓が痩せないよう、日干し、陰干し。
そしてカラッカラに乾燥した蔓を、裏の湧水で柔らかくして編む。600本くらいの蔓を使って、太さを見ながら、長さをみながら、調和のとれるように編んでいく。時折目打ちでぎゅっぎゅと網目を詰めながら。
手提げ籠の持ち手をつくるのに、針金で固定し、形をつけて、実際に巻き手をつくるまでに2か月。
そうして、カゴができあがる。
一つのものを作るのに、トータルして1年ほどかかるようです。
やる気と根気。まさに両方持ち合わせていないとできないでしょう。
何より、かごを作っているときの、真剣さの底に見えるもの。
中川原さんは、
ああ、かごを編むのが好きなのだ。
というのが、魅力的なかごを生み出す源泉なのかもしれません。
ただただ見させていただくばかりでしたが、本当に素敵な時間でした。
歌も物凄く素晴らしかった。空気が揺れるってこういうことなのね!と幸せな時間でした。
ちなみに今回はかごの購入は見送ることにしました。
お目当ての1尺のかごもあって、サイズも良い!と思ったのですが
良い体験をさせていただいたのと、初めて手に取る方に、使ってみての良さを知ってほしい!と思ったから。
ディレクターさんと、きっと縁あればまたかごには出会えると思うんです。と話をしていました。自分を納得させた感も否めませんが、お嫁に行くカゴたちを持った方々が、とても幸せそうな顔をしていたので、これでよかったのだと思いました。
(後々買っておけば…となりましたが、いいのです。きっとまた会えるはず。。)

自分の持っているカゴを、大切に、沢山使おうと思います。

 

今回、中川原さんにお会いすることができたのは、
縁をつないでくださった、温かい方がいてくださったから。
本当にありがとうございました。
出会いに感謝しています。
また、COSMIC WONDERのスタッフの皆さんも色々なことを教えてくださりありがとうございました。
長々と書き連ねましたが、
展示自体は4月3日までやっています。
スタッフの方がものすごく丁寧で、展示の趣旨もとても良いのでぜひ足を運んでみてください。
また、中川原さんの次の実演は、
3月27日に秋田県立博物館で行う予定だそうです。
お近くの方はぜひ。

4 thoughts on “美しいヒト。

  • 2016年3月21日 at 9:12 AM
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    ごめんなさい!
    私が嬉しそうな顔で握っていたからお譲りくださっていたのですね。中川原さんのかごをお持ちだったので、その日はお買いにならないのだろうと思いこんでいました。ずっと年下の方にお気遣いいただいたのに気づかず、自分のことばかりに夢中でお恥ずかしいです。ありがとうございます。

    Reply
    • 2016年3月21日 at 7:47 PM
      Permalink

      mugicaさま

      いえいえ!私の狙っていたのはもう一回り小さいもので、実は私が帰るまで残っていたのです。
      なのでお気になさらないでください!(^_^;)
      また、7寸のものを買ったばかりなので、もっと使い込んでから…と思っておりました。
      素敵な方に出会えたと、かごも喜んでいると思います。
      昨日、最後に中川原さんが歌を披露してくださり
      手塩にかけて 作ったかごが、お嫁先で可愛がられますようにとおっしゃっていました。^o^
      きっと素敵に使われることと思います。とても良く似合っておりましたよ~!

      Reply
  • 2016年3月21日 at 8:30 PM
    Permalink

    ああ、よかった。ホッとしました。次の日も行かれたのですね。初日に底を編んでいらっしゃったかごが、どのようにして形になっていったのか、私も見てみたかったな。お言葉に甘え、4月にカゴが届いてから、バンバン使わせていただきます!それにしても竹にあけびに山ぶどう…かごの魅力はつきません。

    Reply
    • 2016年3月21日 at 10:01 PM
      Permalink

      mugicaさま
      かごの魅力はつきませんね^^今日は鎌倉のもやい工藝さんにお邪魔しましたが、
      山ぶどうの手提げ籠は残念ながら売り切れでした。ナタ入れがとても素敵だったので、
      いつか手提げ籠に出会えたら~と思っています。
      個人的にはころっとしたあけび籠がとても好きです。

      Reply

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